ゴミがゴミを呼ぶ「割れ窓理論」。すべてはひとつのゴミから始まる
“ゴミがゴミを呼ぶ”という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか? 「農業土木学会誌」には、“その出発点は「ゴミが捨てられているのは, そこにゴミを捨てた人がいるからである」という視点である。”と書かれています。誰かが捨てたひとつのゴミが、次のゴミを呼んでしまう、という心理です。これは、「割れ窓理論」という“1枚の割られた窓ガラスをそのままにしていると、さらに割られる窓ガラスが増え、いずれ街全体が荒廃してしまうという、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング博士が提唱した理論にも繋がります。
コロナ禍の今、これまで以上にゴミの捨て方について考えることが多くなりました。特にマスクをどう捨てるかは、環境省のサイトにも以下が掲載されています。
新型コロナウイルスなどの感染症対策としてのご家庭でのマスク等の捨て方
まさに一人ひとりが正しくゴミを捨てることがどんなに大切か? が問われることです。しかし、それがどんなに難しいことか? を考えざるを得ません。
河原などで行うBBQでも同じことがいえるでしょう。ゴミをそのまま放置する人もいますが、ゴミ捨て場ではないのに、なぜか一か所にゴミが集められている、という場面を見たことがある人もいるのではないでしょうか? これは誰かがゴミをまとめたために、そこはゴミを捨てて良い場所、という心理が働くと言えます。
自動販売機の横にある箱はゴミ箱ではない
自動販売機の横にあるボックスは、ゴミ箱ではなくリサイクルボックスだということをご存じでしょうか? ペットボトルや缶をリサイクルするための箱であり、ゴミ箱ではないのです。2020年10月21日に記事になった全国清涼飲料連合会の意識調査「自販機横のリサイクルBOX、“ゴミ箱扱い”過半数、全国清涼飲料連合会が意識調査」によると、児童販売機横のボックスが、リサイクルボックスであることを知らなかった人が4割強いるという数字が出ています。また、次のような結果も出ています。“ペットボトルや缶以外のゴミが出た場合、どこで捨てるか。このほど実施された調査で最も多かった回答は「自動販売機の横にあるボックス」で、調査対象者の52.9%に及んだ。”。これは多くの人が、リサイクルボックスではなくゴミ箱と認識している結果だと思われます。
投入口が下になるリサイクルボックス導入
2021年8月3日の記事に、「来秋にも 自販機横のリサイクルボックス、投入口を下向きにした新タイプ導入」という記事が出ています。
そこに書かれているのは、
“全国清涼飲料連合会(東京都千代田区)は、自動販売機横のリサイクルボックスの仕様を変更し、投入口を下向きにしたボックスの導入を進める。2022年秋に仕様統一を目指す。”です。
これは一般ごみが捨てられないための対策です。リサイクルボックスであることの認知とともに、正しくごみが捨てられるようになることを祈るばかりです。
しかし、実際は、リサイクルボックスが撤去された場所で、以下のような光景を見ました。ボックスがないのに、そこにおいて行く人がいるという光景です。これは無意識にここなら捨てても良い、という心理だと思われます。また、誰かが捨てることで、自分も捨てて良いという前述した「窓割れ理論」に繋がります。
投入口が下向きになっても一般ごみは捨てられるだろう、という意見もありますし、入れにくいという理由でボックスに入れず、ボックス横に置いていくという人が増えるのではないか、という意見もあります。私たちは、正しくごみを捨てることさえできないのか? と思ってしまいますが、ここで働く“自分ひとりくらいはいいじゃないか!”が、ごみ捨て以外の問題も産んでいると感じています。