SDGs コラム

取り戻せない、すでに排出された温室効果ガス。“異常”気象ではない、更新されていく気象問題。

18日連続の札幌の真夏日。15日連続の道内の猛暑日。

2021年の夏は、マスク生活のせいもありますが、特に暑さを感じています。北海道での真夏日や猛暑日の多さも97年ぶりという数字が出ています。そして、感じるのが毎年、「今年は異常気象」だと言われていることです。毎年言われていることは、すでに「異常」ではないということです。変わってしまった地球を、「異常気象」という言葉で片づけてよいのでしょうか?

私が子供の頃(45年以上前)の夏は、暑くても30℃越え程度だったはずです。真夏日という言葉も、猛暑日という言葉もなかった時代です。最高気温が35℃以上の日を猛暑日と呼ぶようになったのは、2007年の予報用語改正からです。それまでも35℃以上の日はあったと思いますが、名前は付いていませんでした。それは、それほど多くなかったからでしょう。

また、40度を超える日も、1933年に山形で観測されてから2007年まで観測されることはありませんでした。2007年8月16日に、埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で40.9℃が記録されました。正直、このときは本当に驚きました。40℃という数字があまりにも“まさに異常”に思えたからです。しかし、今では40℃越えを聞いても、以前ほど驚かなくなりました。それは正しい反応ではないと感じています。

昨年(2020年)には、以下の記事が出ています。

2020年8月の猛暑が「例年以上にヤバい」理由 最高気温41.1度はいかにして発生したのか

この記事では、温室効果ガスではなく、地形の問題やヒートアイランド現象について書かれていますが、その根底には地球そのものの熱が関係していると思えます。

そして、冒頭に書かれている、“今年も猛暑の夏が続いている。気温が40度を超す、もしくはそこに迫る日が各地で続き、8月17日には静岡県浜松市で、これまでの国内最高気温と並ぶ41.1度を記録している。同じ気温は2年前に埼玉県熊谷市で観測されていた。”
の「今年も」の部分です。「今年は」ではなく、「今年も」。そして、それは数年続いているのではないかと思います。そして、「今年(2021年)も」、前述のように新たな記録を作ってしまっています。

温室効果ガスの排出量

2021年4月に発表された、
2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について(国立環境研究所)

温室効果ガス排出の現状等(経済産業省)

これらの資料を見ると、「温室効果ガス排出量」は、2014年度以降は、6年連続で減少しています。しかし、気象問題は大きくなっています。2020年10月には、菅首相は「温室効果ガス2050年実質ゼロ・2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と話しています。しかし、2050年までにゼロにしていくことと、すでに排出されてしまった温室効果ガスによって止まらないこの気象変化の闘いのように感じます。

温室効果ガス排出量を減らすための活動は、企業はもちろんですが、一人ひとりの行動も必要です。宣言をしても行動をしなければ達成はされません。それが小さなことに思えても力を合わせるしかありません。

気温の上昇・海面の上昇

2021年8月9日に、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)から第6次評価報告書の発表がありました。それをもとに多くの記事が出ています。タイトルだけを見ても、世界がすでに厳しい状況であることが分かります。

2015年に行われた「パリ協定」で決められた“世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする”という目標は、厳しいということが分かります。

異常気象、世界で増加 日本など東アジアも―IPCC

「前例ない災害」「人類への警鐘」欧州では洪水や熱波、異常気象が猛威

IPCCが示す地球温暖化の加速と高まる人類への脅威

気温1.5度上昇、10年早まり21~40年に IPCC報告書

温暖化が地球にもたらす「悲惨な未来」を食い止めよ:国連IPCC報告書を読み解いて見えてきたこと

IPCC第1作業部会第6次評価報告書のポイント

2021年の夏も暦の上ではすでに終わり、残暑と呼ばれる時期です。しかし、これを書いている日も、東京の気温は34℃予想です。


伊藤 緑

伊藤 緑SDGsナビ公式ライター

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フリーランスライターと並行して、企業や個人の広報コンサルや広報担当者の育成を行う。2012年より女性コミュニティプロデュースも開始。日本一優しいSDGsの情報発信を目指している。趣味は神社巡り。