SDGs コラム

テレビ局も企業。海洋問題がテーマのドラマ。石原さとみ、綾野剛主演のオリジナル脚本『恋はDeepに』に。

海洋問題を身近に感じるきっかけになるか?

2021年4月14日に日テレでスタートした石原さとみさん、綾野剛さん主演ドラマ『恋はDeep』に。初回が放送されました。コピーは“この春、史上最強のラブコメが始まる!海を守りたい女と、その計画に人生をかける男。地上でいちばんDeepな恋が、幕をあける!”と、恋がテーマになっているものの、設定には海洋問題が描かれています。海の中に造られる建造物による海洋環境の変化が初回から語られています。

石原さとみ演じる海洋学士、渚海音は魚と話ができるよう(一部では人魚という設定ではないか? とも書かれています)。そして、常に魚にとって心地よい環境を考えています。そして、通勤や移動時にはペットボトルを拾いながら歩いています。ペットボトルはプラスチックの象徴です。彼女が拾い集めるシーンを見ることで、ポイ捨てが減る、マイボトルが増えることに繋がるのであればと思います。海や川の周りの清掃活動は行われていますが、毎回かなりのごみがあつまるようです。清掃活動よりも大切なのは、捨てないことです。捨てることを辞めても海には遠い国からごみが流れてくるのですから。少しでもできることをすることが今、私たちに必要なことではないでしょうか?

さて、『恋はDeepに』の初回平均視聴率は10.5%(世帯)5.7%(個人)、2話目は世帯平均視聴率が8.9%(世帯)4.8%(個人))だと結果が出ました。
ドラマを通して海洋問題と伝えるのは難しいかもしれません。 ドラマ内でウミガメが誤って食べてしまうビニールの話や、スマフォの灯りだけで産卵を辞めてしまう、という海洋生物と人間の関係が語られます。

ウミガメは、危険から身を守るために優れた感覚を持っており、もし陸に上がる途中で光や音、においなどに異質なものを感じると海に戻って行ってしまいます。また、上がってきた場所が岩場だったり、掘り始めた場所に卵が収まるような穴が掘れなかったりした場合も、海へと引き返していきます。

千里浜で貴重なウミガメの産卵を観察

明石市役所のfacebookにも
◆ウミガメの上陸・産卵のためにご協力を◆
ウミガメの産卵シーズンになりました。
明石市は、大阪湾周辺で唯一のウミガメの定期的な産卵場所となっており、これまで計19回の上陸・産卵が確認されています。
ウミガメは明かりの無い静かな海岸を好んで上陸・産卵します。
ウミガメを保護するため、市が設置している林崎・松江・藤江・江井島の各海岸施設の街灯を支障の無い範囲で、8月末まで消灯します。
市民の皆さんのご理解とご協力をお願いします。

ウミガメの産卵をテレビで見ることがありますが、本当は撮影などせずそっとしておくことが必要なのだ、と改めて知りました。

テレビ局も企業

今、多くの企業がSDGsについて考えています。株式会社良品計画(無印良品)では、4月23日から、「全飲料をアルミ缶に ペットボトルは販売終了」となりました。企業がSDGsに関して行うことがニュースになる時代です。。それぞれの業種・業態でのみ行えることもあれば、職場の環境として行えることもあります。それらを発信することで、他社は参考にすることができますし、企業イメージも上がります。企業イメージを上げるためだけでは、SDGsウォッシュといわれてしまいますので、必ず行えることを本気で行っていただきたいという思いです。

テレビ局も企業です。テレビ局としてできることのひとつが発信です。SDGsという言葉で番組を作ることも可能ですが、それを見る人は少ないでしょう。それよりも、ドラマの中で誰にでもできることとして表現することは番組制作を行う企業だけができることです。

恋愛がテーマのドラマですが、海洋問題をどこか遠いことと考えている人に向けて、自宅の近くを流れている川が海に繋がっていること。海で遊ぶことが難しくなる可能性があること。

気象庁の日本沿岸の海面水位の長期変化傾向の資料によると、
2020年の日本沿岸の海面水位は、平年値(1981~2010年平均)と比べて87mm高く、統計を開始した1906年以降で第1位の値を更新しました。
と書かれています。

そして、海岸浸食も起きています。

千葉県房総半島の九十九里海岸は全長60Kmにも及ぶ砂浜が続く国内でも有数の海岸線です。しかしこの約40年にわたる海岸浸食により、およそ30kmの海岸線が侵食され、陸地との境となる汀線は最大100mも後退しています。九十九里を含む房総半島全体では、海水浴場が30か所以上閉鎖され、海の家や飲食店なども閉店を余儀なくされているのです。

日本の海岸浸食の実情とは 失われていく砂浜を守るために!

地球に生きるのは人間だけでない

そして、考えるのは地球で生きるのは人間だけではないことです。しかし、人が暮らしやすいように新たなものが作られてきました。それにより便利になりました。それをコロナ禍で改めて感じている人も多いと思います。便利になっていく過程で、それにより起こる環境破壊をどこまで考えていたか? 便利なプラスチック製品で起こる現実をどこまで想像していたか? 私には分かりません。しかし、知ってしまった今、行動を起こすときなのだ、と考えます。

例えば、マイボトルを持つ。日本でペットボトルが使われはじめたのは1977年と言われています。リサイクルが始まったのが1993年9月です。Z世代にとっては生まれたときからあるペットボトルも、50代以上の人間にとっては、なんて便利なものが生まれたんだ! と思ったモノです。缶は開けたら一気に飲まなければならない。水筒はいまほど冷温ができなかった。暑い夏に外で冷たいものを飲むことは喫茶店に入るしかなかった時代です。そんななか、自販機で冷たい飲み物が買えること、飲みたい分だけ飲んで蓋ができることはとても便利なことでした。それに慣れてしまった大人たちは、もう戻ることが難しいかもしれません。しかし、これからを生きる10代には、慣れてしまう前に、新たな習慣を身に付けてほしいと願っています(勝手な言い分で申し訳ありません)。ドラマがきっかけのひとつになれば、と思っています。ドラマなのであり得ませんが、石原さとみさんが拾うるペットボトルが、あなたが捨てたものではありませんように。誰かが捨てたペットボトルは、誰が拾うまでそこにあり続けます。そして、それが川に流れれば海に流れます。ペットボトルに限らず、今は多くのものにマイクロプラスチックが使われています。正しく捨てない限り、それは川や海を汚染していくのです。


伊藤 緑

伊藤 緑SDGsナビ公式ライター

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フリーランスライターと並行して、企業や個人の広報コンサルや広報担当者の育成を行う。2012年より女性コミュニティプロデュースも開始。日本一優しいSDGsの情報発信を目指している。趣味は神社巡り。