SDGs コラム

“生理の貧困”は、女性活躍を阻むもの。豊島区が2021年3月15日から防災備蓄用の生理用品を配布。

女性だけが負担している生理用品費用。いったいいくら負担している!?

2021年3月12日、東京都豊島区が以下の発表をしました。

“豊島区は、3月15日(月曜日)より、金銭的な理由で生理用品を購入できない女性を支援するために、防災備蓄用の生理用品を配布することといたしました。”

月経(以下、生理)は、症状について以前、記事を書きましたが、最近は生理用品の費用についても多く語れるようになりました。女性が一生で生理用品に使う金額については、いくつかの企業や組織が調べているようですが、35万円や70万円という数字が出ています。また生理中に使う下着や身体を温めるための衣類や、痛み止めなどの薬なども含めたら100万円以上になるのでは、という数字も出ています。以前の記事にも書いたように生理は人によって症状が違うため、一概に金額が決められないものです。出血量によって使うナプキンや交換頻度が違うからです。また、会社を休むことになった場合、生理休暇は無給です。派遣やパートなど時間給で働く場合、有給がないこともあります。それ以外にも、生理不順などで婦人科にかかれば病院代も掛かります。生理は、何かとお金がかかるものなのです。

“生理の貧困”という言葉が生まれた

幸い、私は生理用品に困ったことはないのですが、買い忘れてしまったときは、交換の回数を減らしたことがあります。必要なときにないと、とても困るものです。学生時代、急に生理になって友人からナプキンをもらったことも何度かありますし、あげたことも何度かあります。これはお互い様の部分です。そのように女性にとって生活必需品でありながら、税率は10%。税率8%(軽減税率)が適用されるのは「『飲食料品(食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く)をいい、外食は含まれない)』と『定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞』の2点。」のみです。生理用品は含まれていません。生理の貧困でも、税率ことはニュースになっています。

そして、海外をみると、スコットランド議会は2020年11月24日にタンポンやナプキンなど生理用品を無償で提供する法案を成立させました。世界で初めてのことです。そして、以下の発表もされています。

ニュージーランド政府は、2021年6月から、18歳までを対象に、全ての学校で、生理用品を無料で配布すると発表。
フランス政府も、2021年9月から、全ての大学や学生寮で、生理用品を無料で配布すると発表した。

公益財団法人ニッポンドットコム

生理用品が購入できず、学校に行けないという学生がいるためです。また、“生理の貧困”で生理用品を購入できず、不衛生な状態が続いてしまうことで、セックス以外での感染症になることもあるようです。

生理の貧困 と 女性の活躍

女性の活躍が最近とくに議論されています。3月8日の国際女性デーを前に「議席の半分に女性を」と掲げ、一定数を女性に割り当てる制度の導入を求める院内集会が行われました。女性議員が少ない日本は焦っています。それ以前の昨年11月に、内閣府では「国会議員の候補者に占める女性の割合を2025年までに35%とすること」を掲げました。

そもそも、女性の活躍に生理用品の進化なしには語れません。若い世代には、想像できないでしょうし、私も資料で調べて知っているだけですが、ナプキンがない時代には、脱脂綿を使ったりT字体を洗って繰り返し使ったりしていたそうです。今のように情報もなく、経血の処理は自己流か母娘の「口伝」で、脱脂綿を膣内に挿入する女性が多かったといいます。取り出せなくなったり不衛生だったりして病気になることもありました、と言われています。

また、大正末期に発表された細井和喜蔵著『女工哀史』には、経血の処理などが考慮されていない、女工たちの労働環境が描かれているそうです。

ナプキンやタンポン、月経カップなど日々進化している生理用品に、女性は支えられ仕事をしています。最近はナプキン不要の吸水型サニタリーショーツも発売されています。また、生理痛に鎮痛剤を使うことも仕事をするうえで選ぶ道です。それでも、辛い方はたくさんいらっしゃるのですが、女性が社会進出できる状態を作るには、生理用品は欠かせないものです。女性活躍を謡うのであれば、生理用品で困る女性たちに手を差し伸べることは、社会として必要なことではないでしょうか? 学業に集中できないことも女性活躍の壁になります。初潮の平均年齢は10~15才と言われています。その年齢は義務教育の年齢。自分で稼いで買う、ことができない時期です。また女性の身体が変化していく大切な時期だからこそ、十分な生理用品で衛生的に過ごしてもらいたいと思います。

女性の活躍を支援するのは、根本的な問題から

女性支援は、女性議員数を増やすことだけではありません。女性管理職を増やすことだけではありません。社会でイキイキと活躍する女性が増えることが女性の活躍の底上げになるのです。そのためには、女性が心身ともに元気であること。生理用品で困らないことも大切なひとつとして考える必要があるのではないでしょうか?

3月23日追記)政府は、内閣府の「地域女性活躍推進交付金」から交付金の使途として生理用品の無料配布を加えたと発表した。
政府、女性支援へ交付金を拡充 生理用品の無料配布も


伊藤 緑

伊藤 緑SDGsナビ公式ライター

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フリーランスライターと並行して、企業や個人の広報コンサルや広報担当者の育成を行う。2012年より女性コミュニティプロデュースも開始。日本一優しいSDGsの情報発信を目指している。趣味は神社巡り。