SDGs コラム

「ガラスの天井」を割るためか? 急に風向きが変わった女性登用。

「ガラスの天井」とは何か?

SDGsについての知識がある方には釈迦に説法になってしまいますが、改めて「ガラスの天井」について、確認したいと思います。

最初に使われたのは1978年。アメリカの企業コンサルタント・マリリン・ローデン氏です。英語圏での使用なので「glass ceiling」という言葉だったと思われます。そして、1986年3月にウォールストリート・ジャーナル紙がこの言葉を取り上げ、一般的になったと言われています。しかし、私はこの言葉を知らずにいました。“ガラスの天井”、作詞家でもある私にとっては、歌詞に使えそうな綺麗な言葉と思ってしまいます。“glass ceiling”も同様です。しかし、実際の意味は厳しいものです。いくつかの説明がありますが、

・女性や社会的マイノリティの人々が組織の要職につけないなどの「目に見えない制限」を現した例え
・資質・実績があっても女性やマイノリティを一定の職位以上には昇進させようとしない組織内の障壁を指す
・男性が組織の上層部を支配しているなかで、女性がキャリアアップを目指す際に直面する障壁(バリア)を意味する比喩的表現

などいくつかの解説があります。

女性への不適切発言で、急に風向きが変わったことへの疑問。

ジェンダー問題はSDGsでもいろんな角度から語られていますが、森喜朗氏の女性への不適切発言の後の人事について、急に風向きが変わったと感じています。もちろん選ばれている方は、そのポジションで力が出せる方、ということで決められていることは十分理解しています。しかし、どこか「女性であることを前提に」という現実が透けて見えているように感じています。

・五輪組織委会長:橋本聖子氏(56歳)
・東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣、内閣府特命担当大臣(男女共同参画):丸川珠代氏(50歳)

が選ばれました。女性に対する言葉から起きた人事のためか、二人の女性が要職に就くことになりました。

そして、新たに「ジェンダー推進チーム」が発足し、小谷美可子氏(54歳)がリーダーになりました。

当然のことなのかもしれませんが、すべてが女性です。

「ガラスの天井」を割るきっかけになれば

どんな理由であっても、これがきっかけとなって女性に対する「ガラスの天井」が割られるきっかけになれば、と望みます。ただ、「あの発言があったから女性を」ということであれば未来に繋がらない、と感じています。ですので、本当に問われるのはこれからの他の部門での人事です。2018年の安倍内閣では女性が少ないと言われました。菅内閣も女性大臣は2人でした。その理由は、元々、女性議員が少ないことがあります。2020年2月の時点で、衆議院議員に占める女性の割合は9.9%で、世界191か国中165位です。母数が少なければ、選ばれる人数も少なくなります。

女性に対する「ガラスの天井」を割るためには、女性自身が男性に頼ることなく、自分の足で動くことが大切だと感じています。日本の政治の世界は、今も力ある人の庇護に入らなければ、生き残れないイメージがあります。それでは、政治は変わらない、と思うばかりです。素晴らしい意志や思いを持って政治の世界に入っても、政治の世界には派閥があります。希望するポジションに就くためには上の人のYesマンになる必要があるのが現実です。意思や思いはいつか塗りつぶされていく、そんなことが長く続いているように感じています。本気でこれまでの常識を変えていってほしいと願うばかりです。

2月13日に起きた地震の気象庁地震会見

2月13日に大きな地震が起きました。その際、気象庁の会見を行ったのは女性でした。これは珍しいことではないか、と思います。私自身、無意識に会見は男性というイメージを持っていたことに気づきました。調べてみると、会見を行った女性は、気象庁の地震情報企画官の鎌谷紀子さん。ジェンダーのことを語りながら、自分の中にある思い込みに気づくきっかけになりました。女性の会見については、分かりやすいという意見も多かったようです。今後のことは分かりませんが、これまで当たり前に男性が行っていたことを女性が行う。それにより、張られていた「ガラスの天井」が割られることを望みます。

社会的マイノリティの人々に対しての「ガラスの天井」

女性だけでなく、社会的マイノリティの人々に対しても同じことを感じています。数十年前に比べたら、社会的マイノリティの人々に対する社会の対応は変わりました。しかし、それは、どこか「しなければならない」「した方がいい」「した方が企業や個人のイメージがよい」という気持ちが透けて見えることがあります。もちろん、そこからのスタートでも良いのかもしれませんが、誰もが急に社会的マイノリティになる可能性があるのが人生です。その時に、どうにかしたい、と思っても遅いかもしれません。自分事として考えることは難しいことですが、1秒先に何が起こる分からない現実を知り、他人事にして「振りをする」、「表面だけ整える」のは、いつか自分に返ってきてしまうかもしれません。


伊藤 緑

伊藤 緑SDGsナビ公式ライター

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フリーランスライターと並行して、企業や個人の広報コンサルや広報担当者の育成を行う。2012年より女性コミュニティプロデュースも開始。日本一優しいSDGsの情報発信を目指している。趣味は神社巡り。