結婚は、名字を同じにすることなのか?そうでないと絆は保てないのか?
結婚をすると、同じ名字(氏)になる。50代以上の女性なら子どもの頃に、好きな人の名字に自分の名前を付けてみた経験がある人もいるのではないでしょうか。ある時期まで、結婚したら女性は男性の名字になることを当たり前だと思っていました。
もちろん、ひとりっ子などで男性が女性の家に入り女性側の名字になることもありますが。しかし、女性活躍が謳われ、女性支援も行われる今、仕事を始めたあとに名字を変えることは、時に仕事のスピードを落とすことがあるのではないでしょうか。特に今後は会社の名前でなく、個人の名前で仕事をしていく時代になっていくと考えられます。その時、名前はその人の看板です。
インターネット上でその人がこれまで行ってきた仕事を調べる際も、名前で検索します。名字が変わることはインターネット上では別人になってしまうということ。女性活躍を支援するという流れの壁になると感じています。
TVドラマ『監察医 朝顔』の主人公は夫婦別姓?
現在放送中の上野樹里さんが主演を務める『監察医 朝顔』、主人公の監察医である朝顔は結婚し子どもがいます。しかし、彼女は仕事をする際に名乗っているのは、旧姓である万木(まき)です。先日の放送でも「万木朝顔です」と名乗るシーンがありました。ドラマ内で名字についての説明はされていませんが、監察医として働く彼女が名字を変えずに仕事をしているという理解で良いのかな、と思っています。
ドラマ内で説明のないまま夫婦別姓でストーリーが進むのは、それが当たり前になりつつあるということでしょうか? ちなみに、朝顔は結婚相手を相手の名字である「桑原くん」と呼び続けています。戸籍上は自分も桑原であるのだと思うのですが……。それによって、余計に夫婦別姓なのか?と感じるわけです。12月の放送までは、朝顔の父親が一緒に住んでいたため、家の表札は「万木」と「桑原」が併記されていましたが、父親が別の場所に住み始めた今後、表札はどうなるのか?も気になるところです。
追記)2021年1月11に放送された新春SPで出産時のシーンがあり、桑原朝顔という名前がでてきました。
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改めて夫婦別姓について調べてみました
夫婦別姓は、正式には「選択的夫婦別氏(べつうじ)制度」というようです。法務省のサイトには、以下のように書かれています。
現在の民法のもとでは,結婚に際して,男性又は女性のいずれか一方が,必ず氏を改めなければなりません。そして,現実には,男性の氏を選び,女性が氏を改める例が圧倒的多数です。ところが,女性の社会進出等に伴い,改氏による社会的な不便・不利益を指摘されてきたことなどを背景に,選択的夫婦別氏制度の導入を求める意見があります。
法務省
法務省としては,選択的夫婦別氏制度の導入は,婚姻制度や家族の在り方と関係する重要な問題ですので,国民の理解のもとに進められるべきものと考えています。
ということで、まだ夫婦別姓は法的には認められていません。逆にいつから夫婦が同じ姓を名乗ることになったのかを調べてみたら、明治時代の1898年に施行された民法で「夫婦は家を同じくすることにより、同じ氏を称する」から始まっているようです。江戸時代は一般市民は名字を名乗ることができなかったので、一般市民が名字を使うようになってからずっと、といってもよいのでしょう。
そして、法的に夫婦同氏としているのは、2014年以降、世界的には日本だけのようです。1979年に国際連合で採択された条約から、夫婦別姓については何度も改善勧告されているようですが未だ実現していません。旧姓のまま働きたいと思う女性たちは、通称として使うことになります。
ですので、法的なことでは使えないのです。また、企業によっては旧姓での仕事の継続を認めていない場合もあります。通常で使うことができる場合は、芸能人や作家が使う芸名やペンネームのようにビジネスネームとして旧姓を使うというイメージでしょうか? 個人事業主の場合は、屋号として旧姓を使うという方法があるようです。
生まれたときから使っていた名字を変える気持ち
私自身は、結婚を経験していないため名字が変わることをリアルに語ることができませんが、2020年11月22日「いい夫婦」の日にアップされた「ペーパー離婚」をした方の記事を読んで改めて別姓について考えさせられました。
ペーパー離婚をした。10年前、夫に名字を「譲った」自分が許せなかった【選択的夫婦別姓】
この記事を読んで、私自身も自分の名前への思いが強いことを感じました。失うことを経験しないと大切さは分からないと言いますが、まさに私は自分の苗字を失う経験をしたことがありません。
これまでずっと「伊藤緑」で生きてきました。作詞家としての活動も基本「伊藤緑」です。いくつかペンネームはあり使い分けはしていますが。自分が生きる証が「伊藤緑」なのです。結婚という大切な人と一緒になるときに大切な名前を手放すことに、矛盾を感じます。
もちろん、大切な人の名前になることが喜びになるという意見もあります。また、ご自身の名字を変えたいと思っている方もいると思いますので、一概には言えません。
選択肢を増やす時代になった今
多様性が謳われ、選択肢が増える時代になりました。先日も女子高生の制服にスラックスという記事を書きました。ちなみに、その際に書いていませんでしたが、男性がスカートを選ぶことを許している学校もあります。そのような時代に、かなり長い間、夫婦別姓については語られ続けています。
法務省では、平成3年(1991年)に審議が行われましたが、国会には提出するには至っていないとのことです。省庁での動きを調べてみました。総務省のサイトには、“住民票、マイナンバーカード等へ旧氏(きゅううじ)を併記できるようにするための住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令が平成31年4月17日に公布されました(平成31年11月5日施行。)”と書かれています。
そして、外務省が、2020年12月には、パスポートに関する旧姓記載のニュースがでました。旅券(パスポート)への旧姓併記を、2021年4月1日以降の申請については緩和し、記載方法を変更するとのことです。この変更に伴い、“戸籍謄本、旧姓が記載された住民票の写しまたはマイナンバーカードのいずれかで旧姓を確認できれば、旧姓の併記を認める”とのことです。
パスポートに関しては、結婚後の海外への新婚旅行の問題もあるのだと思います。このように調べてみても、法務省と総務省と外務省と3つの省が出てきます。夫婦別姓が法的に認められるには、まだ時間が掛かりそうです。女性支援を謡いながら進まない夫婦別姓。事実婚では、家族と認められないことがあるともいわれるなか、夫婦別姓が認められないのは、女性支援という言葉と矛盾しているように感じるのは、私だけでしょうか?
個人的に、旧姓と結婚後の名字をうまく使っていらっしゃるのは、松任谷由実さんだと思っています。旧姓の荒井由実さんという名前も多くの方に知られ、荒井由実時代の楽曲と松任谷由実時代の楽曲と言われることもあります。しかし、これはとても稀なことです。