最高に格好いいエコな家「アースシップ」
「アースシップ」という言葉は、どのくらいの人に知られているのでしょうか? 私は、つい最近知ったばかりです。もちろん建築関係の方や、環境問題に関わる仕事をしている方などは、ご存じだと思います。しかし、私のように知らない人もまだまだ多いのではないかと。
アースシップは、“循環型”オフグリッド(公共のインフラを必要としない建物)住宅。廃タイヤや空き缶、空き瓶などの廃材と土で作られ、電気などのエネルギーや水がすべて循環する家です。このように言葉で書くと、ストイックな人が我慢して暮らすイメージを持つ方がいるかもしれません。しかし、日本で唯一のアースシップは、綺麗でオシャレです。
その家は、徳島県美馬市にあり、倉科智子さんがご自身で海外から専門家を呼び、ワークショップを行い、建設クルーを募集し、内装は大工さんや左官屋さんと相談して作り上げた家です。
SDGsを意識させないくらいの商品を生み出すこと
私がSDGsについて書くときに考えていることのひとつが、“環境問題を意識したものだから、我慢してください”ではないものを伝えていくということです。これまで、海洋ごみで作られたサングラスや、廃材で作られた靴。ドラマの中の話ですが、落ちリンゴで作ったリンゴプリン。「ちょっと見栄えは悪いけど我慢してください、不便だけど我慢してください、美味しくないけれど我慢してください」ではない商品です。個人の好き嫌いはありますが、「格好いいじゃん!」「美味しいじゃん!」と思って購入する、その時にSDGsのことなんて考えない、なんならSDGsなんて知らないくらいでも良いと思っています。
そして、それらを使っていると、周りの人から格好いいじゃんと言われたり、これ美味しいねって言われたりする。そんな風に日常に溶け込むことこそが持続可能なことではないかと考えています。理想論であることは重々承知です。ただ理想を持たない限り、そこに行けませんから。
そんな風に考えるようになったのは、Z世代やそれより若い世代に、これからの環境問題すべてを背負わせるのではなく、その準備をするのが今の大人たちだと考えるからです。
アースシップは、どんなもの?
話が逸れましたが、アースシップについて。アースシップの提唱者は、建築家マイケル レイノルズ氏です。ニューメキシコ州タオスでアースシップタウンをベースにし、世界中に「住まいの未来」を建て続け、サスティナビリティーに挑戦している方です。
日本にひとつしかないアースシップですが、世界でも3000ほどしかないようです。それだけ建てることが大変なのだと思います。ですので、「ぜひ、みなさんも」なんてことは言えませんが、こういった家があることを知ることがSDGsの一歩ではないでしょうか?
日本のアースシップ「Earthship MIMA」
アースシップが日本にひとつしかない理由のひとつには、資材を集めるのが難しいことがあります。倉科さんの家の場合は、4駆サイズの廃タイヤは約800本。空き缶は約13000個。空き瓶は約4000本が必要だったと書かれています。これを集めることはとても大変んなことです。
しかし、毎日私たちはごみとして、空き缶や空き瓶を出しています。それらは資源として再利用されていますが、アースシップの素材にもなることを今回初めて知りました。いつか、そういうシステムができたら、と思ってしまいます。ただの素人考えですが、持続可能の謡う限り、システムや仕組みが必要だと考えます。アースシップに必要な資材を集める企業が立ち上がり、そこに住むためにそれを作りたいと思う人が一緒に作る、ということは、もしかしたらいつか現実化するのかもしれません。アースシップには、木材は使われません。それはSDGsの「陸の豊かさも守ろう」です。
私にとって「アースシップ」は、先日知ったばかりのことなので、理想論ばかりを書いていますが、家がこのように作ることができるということに正直、驚いています。そして、それを行う企業が生まれるのではないか? とも思っています。空き缶や空き瓶が今のリサイクルだけでなく、そのまま家の資材となるなんて考えもしませんでしたから。しかし、タイヤに関しては私も集め方が分かりません。それも4駆となるとかなり限られるでしょう。そして、資材を準備して終わりではありません。ここからが専門家の登場です。「アースシップ」を提唱する建築家マイケル レイノルズ氏が来日し、2017年11月18日(土)~19日(日)に行われたワークショップ。そこには日本だけでなく海外からも参加があったようです。そして、“自然エネルギーハウス「Earthship」建設クルー募集”が行われ、1年後の2018年11月5日(月)~12月2日(日)の4週間に渡り、アースシップの建て方を一緒に学ぶ機会がありました。そこで、倉科さんの家が作られたのです。しかし、その後の内装はまた別の話。倉科さん自身が大工さんや左官屋さんに依頼して内装をしたそうです。費用面では、クラウドファンディング「徳島県美馬市に、自給自足できる家 『EarthShip』を建設したい!」も利用されています。通常の住宅のように、業者にお任せして完成を待つわけではなく、「アースシップ」を理解し、自らが作ることに本当の意味があるのでしょう。
https://readyfor.jp/projects/earthship
廃タイヤは暖かく、廃ガラスはおシャレな窓に。
完成した「Earthship MIMA」では、1日1組宿泊のプライベートゲストハウスとなっています。宿泊し、体験してもらうことがアースシップに住むことを知るに繋がるのだと思います。
廃タイヤで作られた丸い部屋は室温が21℃に保たれ、冷暖房がいらないそうです。そして、トイレは水洗トイレです。Webサイトには、“室内で使用する水は全て屋根でキャッチした雨水をろ過して使い、風呂や洗面で使用した水が建物内に植えられた植物の根元を通り、これらの植物を自動的に育てます。”と書かれています。宿泊を希望される方への倉科さんの言葉に“この家の滞在の仕方には少しコツがいる”とあります。便利に慣れた私たちには、少しの制限も不便と思うことがあります。しかし、それはちょっとした工夫で解決することかもしれません。それさえも楽しむことができれば、と思っています。2軒目のアースシップが、いつできるのが分かりませんが、持続可能な形のひとつだと思っています。今回、アースシップを知り、調べて原稿を書くなかで、SDGsを形にするには本当にたくさんの形があることに気づきました。ただ、「Earthship MIMA」の建設に関わったわけでも、宿泊さえしたこともありません。綺麗な部分だけを切り取って書いてしまっているかもしれません。ただ、このような家があることを一人でも多くの方に知っていただきたい、と感じています。
最後に、アースシップを調べているなかで、2006年に掛かれた記事中に、“日本でも香川県にマイケル氏を招いてEarthshipを建てた前例があるようだが、建築基準法をクリアできないということや、日本の自然環境に適合した造り等、問題や制約が多いようだ。”という記述がある。やはり簡単ではないから増えていないことは確かなのだろう。