SDGsという言葉の認知が、社会人より大学生の方が高いという結果が出ていることを以前書きました。その理由のひとつが就活のためです。
実際には世の中に良い活動はほぼしていないけれど、知識だけが頭に入っている状態なのかもしれません。それでも、知らないより知っているのは一歩進んでいることです。または、エコ意識が高い自分を演じることでいい人であるように見せたい自意識。あるいは、就活を有利にするために関心はないけれど調べることかもしれません。大学生にとっての就活は人生を決めるもの。そこで見せる自分は、より理想的な自分である必要があります。企業の選考方法は毎年のように変わっていきますが、その企業にとって理想的な自分を演じることは就活には必要なことだと思います。それが正しいことかどうかは別として。特にコロナ禍で就活が厳しい今、大学生や高校生で就活を行っている人たちには切実な問題です。
企業は生き残るために希望退職を募りながらも、社会に良いことをしているという面もアピールする必要がありSDGsに関わるプレスリリースも配信されています。直接的でなくても、新しい商品やサービスが環境に配慮したものであるという情報は多く出ています。CSR報告書が多くの企業から出されていますが、SDG報告をしている企業もあるようです。
しかし、企業は何をすべきか、何を伝えるべきか明確になっていない場合も多いよう(SDGsウォッシュという言葉もありますし)です。
大学生は、企業サイト内のサステナビリティに関する情報を読むことでしか、その企業が行っている活動を知ることができません。調べるということは知ろうという思いがあることです。そして、自分の言葉で語るために考える。実際にその企業の商品を購入してみることもあるでしょう。そうして、彼らはSDGsの世界を少しずつ知っていきます。
タイトルに“エセエコ”という言葉を使いました。ひとつには、前々回書いた無意識で買ったものが環境に配慮した商品だったということも、ある意味“エセエコ”かもしれません。積極的に買ったわけではないけれど、たまたま手にしたものが、ということです。そして、冒頭に書いた、エコを意識している人を演じることもそうです。そして、就活のために知識を頭にいれることも“エセエコ”なのかもしれません。ただ、それは悪いことではないと思っています。
積極的な学生であれば、面接の際にSDGs視点で自分の思いを話すこともあるでしょう。正直、前述したように多くの企業はSDGsに関して苦慮しています。学生目線での提案もありがたいと思う企業もあるかもしれません。それは、社会人にはない視点だからです。どうしても人は歳を重ねると頭が固くなります。また、企業に入ってしまうと視点が限られることもよくある話です。まだ社会を知らないからこその発想は斬新で新鮮で具体的かもしれません。「出来る出来ない」を考えない、「予算」を考えない思いつきほど強いものはありませんから。実際には環境に配慮したことは何もできていなくても、考えることだけでも十分にSDGsな生き方です。
今、「大学 就活 SDGs」で検索をしてみました。2020年9月に、就職情報会社ディスコが来春卒業予定の大学生を対象に行った調査結果が出ていました。
約7割の学生がSDGsを知っていると答えるいるようです。そして、一番関心があるのが、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」であること。これはインフラ整備なども含まれます。今日(2020年11月15日)のニュースで、山口県上関町の長島と本州側とを結ぶ唯一の陸路である上関大橋での事故の記事が出ていました。橋と道路のつなぎ目にできた段差(20cm)に乗用車が衝突したというものです。
この橋の完成は1969年、完成から50年以上が経っているインフラです。国土交通省のサイトを見ると、“高度成長期以降に整備された道路橋、トンネル、河川、下水道、港湾等について、今後20年で建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなります”という記述があります。インフラの見直しの目安に50年という数字があるようです。こういったことこそ、これからの世代が考えていかなければならないことです。
これらを大学生が知ったとき、SDGsをより具体的に語れるのではないかと思います。今はまだ、具体的な活動ができていなくても、SDGsが何かを調べどんなことができるのかを知れば、気付けば彼らは“エセエコ”ではなくなっているのかもしれません。