日本の男女比は、ほぼ1対1
5年に一度行われる国勢調査。2021年3月22日に公表された人口は1億2548万人。3月1日現在の男女比の概算は、男性6103万人・女性6446万人とされています。
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202103.pdf
数字だけを見ると女性が多いようですが、年代別でみると女性の方が長寿であるためか、55歳未満では男性の方が多いですが、55歳以上では女性の方が増えています。しかし、その差は大きいわけではなく、ほぼ1対1といえるでしょう。 このような状況のなかで、これから社会に出ていく人たちは「働く場」で男性と女性の人数の割合について考えることが増えると思います。
指導的地位に占める女性の割合30%を達成できなかった日本
平成15年(2003年)6月20日に男女共同参画推進本部で決定された「2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする」という数字は目標で終わってしまい、達成期限を先送りし「2020年代の可能な限り早い時期に」となりました。2003年、17年後である2020年は女性がもっと活躍している世の中になっている、と想像したのでしょう。なぜできなかったのか?
以下に厚生労働省が発表している、「平成15年版働く女性の実情」があります。2003年に指導的地位に占める女性の割合の数字が知りたくて調べたのですが、この発表しか見つけられませんでした。
平成15年版 働く女性の実情(PDF)
指導的地位に占める女性の割合30%にするために、2003年には「ポジティブ・アクション」という言葉がよく使われていたようです。
ポジティブ・アクションは、以下と記されています。
固定的な男女の役割分担意識や過去の経緯から、
厚生労働省
・営業職に女性はほとんどいない
・課長以上の管理職は男性が大半を占めている
等の差が男女労働者の間に生じている場合、 このような差を解消しようと、個々の企業が行う自主的かつ積極的な取組をいいます。
このなかのある表現、最近もよく耳にするような気がしませんか? 以下の表現とよく似ています。
新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針
“事業者及び関係団体は、今後の持続的な対策を見据え、業種別ガイドライン等を実践するなど、自主的な感染防止のための取組を進める。”
という言葉が使われています。
企業まかせであり、事業者及び関係団体まかせであり、自主的な取組です。何かを解消・解決しようとする際の考え方が変わっていないと思う点です。
女性の積極的登用は昭和52年(1977年)から掲げられていた
女性(当時は婦人)の登用については、昭和52年(1977年)から掲げられていたことが以下のレポートから分かります。これは、婦人の政策決定参加についての数字ですが、その時の婦人委員の割合は3%で目標は10%。44年前から目指す目標があったのです。
ポジティブ・アクションについて(PDF)
以下の部分です。
“昭和52年6月14日 「婦人の政策決定参加を促進する特別活動推進要綱」(婦人問題企画推進本部決定)
国(中央及び地方支分部局)の審議会等委員に婦人を積極的に登用し、まず政府全体として10%程度へ引上げをめざすこと(婦人委員の割合は中央段階で現在3%)。”
その後、平成8年(1996年)、平成11年(1999年)にも具体的な数字が出ています。
そして、調べたところ、国の審議会等における女性委員の割合は、
“平成12(2000年)年8月15日に男女共同参画推進本部で決定された目標である「30%」を平成17年(2005年)9月末に達成した。”とされています。
参考:国の審議会等における女性委員の登用の促進について
1977年に10%を目指し、2000年に30%を目指し、2005年に達成しています。
そして、以下のレポートによると、2020年9月30日現在の調査結果は、
・国の審議会等委員に占める女性の割合 40.7% 成果目標(40以上、60%以下)期限:2020年
・国の審議会等専門委員等に占める女性の割合 30.3% 成果目標(30%)期限:2020年
という数字が出ています。なぜこの数字は達成できたのか? 何をしたのか? それが知りたいです。
しかし、2005年から15年経っても50%にはなっていないことも明らかです。
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/ratio/pdf/singir020930.pdf
割合(数字)だけで決めて良いのか? と考えたこともある。
国の審議会等専門委員等は30%を超えていますが、指導的地位に占める女性の割合は10%にも届いていません。正直、この数字の低さを残念に思いながらも数字だけで決めて良いのか?と思ったこともあります。これは、能力や適性を考えず男性と女性という性別だけで割合を決めることに疑問を感じたからです。その理由は以下です。
高等学校の合格者について2021年3月25日に以下のニュースが出ていました。
都立高校入試の“男女別定員制” 同じ点数なのに女子だけ不合格?
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20210325.html
東京都立の高等学校では、男女別定員制が行われており男性と女性で合格ラインの点数が違います。「男女の合格最低点に差が生まれ、女子のほうが高くなる傾向がある」と書かれています。
また、以下のレポートには明確に書かれています。
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2020/files/release20200924_05/report.pdf
“男女合同定員制を行うと往々にして女子の合格者が多くなる傾向があり、男子が入学できる余地を残しておくためにも、男女別定員制は意味があるのではないかと考える。また、男女合同定員制にすることで男子の入学者数が減り、文武両道を目指す学校では男子種目の縮小につながる可能性も考えられる。”
この言葉に少し驚きました。高校入試の時点で女子に不利なことが起きているのです。
これを見たときに割合で決めることに疑問を覚えたのですが、社会に出ると状況は大きく変わります。能力のあるなしに関わらず、女性には補佐的な仕事しかさせない企業はまだまだ多いと感じます。男女の雇用機会を均等にする法律はありますが、企業の中まで法律は届きません。企業ごとに伏魔殿のような見えないルール、入社しないと分からないルールがあると感じています。
企業の中に入れない法律。見えないその企業だけのルール。それは、コロナ禍の失業率でも感じます。2021年1月16日のニュースに、
コロナ禍で女性の実質失業率5%強、実際は政府統計の倍 仕事激減・休業手当なし90万人
があります。
“女性のパート・アルバイトで仕事が半分以下に減り休業手当も支払われない「実質的失業者」が、昨年12月時点で90万人に上ることが野村総研の推計で分かった。女性全体の公式統計の失業者数と足し合わせて試算すると、完全失業率は2・4%(昨年11月、季節調整値)から5%強に上昇するという。(渥美龍太)”
総務省が出している「労働力調査」では、2.4%と言われている数字に含まれない数字です。この数字こそが、男性より女性が職を失う可能性の高さを表わしているように感じます。
都立高校の入試についての疑問は残りますが、まずは数字で指導的地位に占める女性の母数を増やすことは必要なのだ、と考えるに至りました。学生時代と社会人になってからの男性と女性の見られ方は変わります。10代では見えない男女格差、男女で得られるポジションや報酬の違いは明らかにあります。女性が望んでも手にできないことがあることを、Z世代やそれより若い世代に変えていってもらいたい、17年かけても変えられずに来たことを、これから変えていっていただきたいと考えています。
働く場の環境問題も
指導的地位に占める女性の割合だけでなく、働く場所の環境の整備も進んでいないことがあります。分かりやすい例でいうとトイレです。男性社員が多く、女性社員が少ない場合、女性専用のトイレがない職場は今もあります。
労働安全衛生規則第628条で
事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。ただし、坑内等特殊な作業場でこれによることができないやむを得ない事由がある場合で、適当な数の便所又は便器を備えたときは、この限りでない。
労働安全衛生規則第628条
1.男性用と女性用に区別すること。
2.男性用大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上とすること。
3.男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上とすること。
4.女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上とすること。
という記載があります。最初に書かれていることが「男性用と女性用に区別すること」です。しかし、私自身、男性と女性のトイレが別になっていない職場で働いたことがあります。正直、会社ではトイレに行かないようにしよう、と思うこともありました。しかし、それは難しいですし健康的に良いことではありません。
これらの問題もひとつずつ解決していかなければならないことです。